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ワークショップは準備が9割(前編)

2016.09.20
#共創#博報堂ブランド・イノベーションデザイン

年間300件のワークショップを手がける博報堂ブランドデザインメンバーが語る、 ワークショップの奥義とは?

(手前左から)博報堂ブランドデザイン小原、森、竹田 (後方左から)山田、加藤
アイデア創造や体験共有、合意形成など、今やビジネスにおいて様々な目的で用いられるようになった「ワークショップ」。でも、いざ実施しても、思うような効果が得られない、参加者のモチベーション維持が難しいといった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
年間300件のワークショップを手がける博報堂ブランドデザインのメンバーが、ワークショップの奥義について語りました。

博報堂ブランドデザインが手がける、 目的・規模・手法も多様なワークショップ。

ーみなさんが手がけるワークショップについて教えてください。

山田:実に多様ですね。経営戦略策定や商品開発、テクノロジー開発、市民との交流など、目的はさまざまです。小さい規模だと数人、大きい規模だと1,000人が参加するものもあります。僕個人は年間50件ぐらい担当していますが、ブランドデザイン全体では年間300件ぐらいのワークショップをやっています。

小原:毎日誰かがやっている感じだよね。

森:クライアントの海外拠点で実施するケースも出てきました。北京、バンコク、デトロイトと、ワークショップをしながら各国拠点を回ったこともあります。

山田:ブランドデザインメンバーだけで実施することもありますが、当該分野の専門家など、外部の方と一緒に実施する機会も多いです。一緒に実施することで、いろんなナレッジやノウハウが交流して、お互い新しい気付きが生まれたり、蓄積されたりしていますね。

森:「あるフォーマットに沿った」運営に限らず、目的や規模に応じて最適な設計と実施を進めています。

ー数多くのワークショップを手がけた中に、成功や失敗談はありますか。

森:もちろんあります。成功と失敗を重ねたことで今がある。

山田:まさに。成功談で言うと、一軒家のハウススタジオを借りて行ったワークショップは好評でしたね。テーマが食だったのですが、くつろいで話が出来たこと、食を提供する場である家でアイデアを出し合ったことが、良かったみたいです。

森:会場って、ただ雰囲気で選ぶのではなくて、題材との関係があるよね。

小原:失敗談だと、メンバー設定で失敗したケースがあると聞いたことがあります。趣旨を正しく共有出来ず、役員クラスだけが集まってしまい、全く盛り上がらなかったらしい…。

森:僕は、会場で流す音楽で失敗したことがあります。議論する中身に夢中になり過ぎて、事前に音楽の用意を忘れてしまって。たまたまコンピュータに入っていた私の好きなオペラをかけたら微妙な雰囲気に(笑)。無調の音楽にフランス語の歌詞。気まずいことこのうえなし。

小原:わ、それは気まずいね。あとは、スピーカーが完備されていなくて、持って行った小さいスピーカーを部屋の片隅に置いておくと、近くの人にはうるさいし、向こうには聴こえないといったことがありました。

山田:いろんな反省を踏まえて思うのは、ファシリテーションを極めることは当然だけど、意外と「準備」に落とし穴があるんじゃないかということ。振り返ると、実は、失敗例って、議論の中身というより、会場やレイアウト、食べ物のチョイスだったり、ワークショップ周辺の準備で失敗しているんですよ。

博報堂ブランドデザインが直伝する、ワークショップに必要な準備とは?

ー具体的に必要な準備には、どのようなものがありますか。

[会場]

森:準備の始まりは会場。とても重要です。

加藤:そうですね。なので、選べる場合は、例えば窓があって開放感があるとか、非日常感を大事にしています。話しやすい空気感をつくりたいので。

竹田:カンヅメになるしね。

山田:そうだね。ちょっとお庭があるとか、緑があるとか、そういうところはいいですね。

小原:初めての会場だと、事前に見に行くことも・・・。

森:会場の問題はレイアウトの問題にもかかわってきます。会場によって借りられる机や備品も変わりますし。

[レイアウト]

山田:会場が決まったらレイアウトを決めます。たとえばオープニングのときはみんなで円になって、「チェックイン」と言うんですけど、その場に入るということをする。その後の議論では、基本はテーブルに分かれてグループサーベイをするのですが、もっと距離を縮めたいときはテーブルを使わないときもあります。1回のワークショップで何度もレイアウトを変えることもありますね。

森:そうだね。床に座って議論するレイアウトなんかもあります。いつもと違う形式で、膝詰めで話すというのは案外よかったりしますね。

[ドレスコード]

小原:ドレスコードも目的によってさまざまですね。基本はリラックスしてほしいから、スーツじゃない恰好をお願いすることが多いかな。

森:黄緑色がブランドカラーの新商品について議論する時に、「何でもいいから黄緑色を身につけて来てください」とお願いしたこともあります。

[お弁当・飲み物・お菓子]

加藤:食べ物は、ご提供内容とそのタイミングを考える必要があります。例えば飲み物では、若い方が多いワークショップであれば、多めにジュース系を用意します。また、女性の方がたくさん集まる会だと、中にご妊娠されている方がいらっしゃる場合もあるので、カフェインなしで飲めるお茶を用意したりしますね。

山田:コーヒーのポットサービスが途中で来ると、みんながリフレッシュするというのもありますね。あとは、若者向けの終日ワークショップでは、15時ごろにサービスでアイスクリームを出したこともありました(笑)。煮詰まっているときに、タイミングを図ってそういうものを提供すると、議論が盛り上がることがあります。

竹田:お昼時間を切り替えに使いたい場合は、珍しい食べ物も喜ばれますね。この間、バナナの葉っぱにくるんだカレーを出して会場がうわーっと盛り上がりました。あとは、形も重要ですね。基本、手に取りやすい個包装が定番。お昼も話しながらということもあるので、片手で食べられるサンドイッチにしたり。

森:そのときのテーマと掛け合わせて選ぶこともある。生姜の成分を使った新商品について話す際、全部生姜が成分として入っているものを出したメンバーもいました。それくらいこだわらないと。

小原:季節感を出すというのもあるね。煮詰まるのがわかっていたワークショップで、4月は桜の、梅雨時季はアジサイがあしらわれている和菓子を用意したことがありました。

森:英語で軽食のことをリフレッシュメントて言うけれど、まさにそうだよね。受け手の立場に立って、その時その場に必要なリフレッシュを考える。

[音楽]

小原:音楽ってやっぱり重要。基本はあったほうがいいよね。

竹田:でも、常に流すのではなくて、深く自分と対話したり、掘り下げるときは、あえて流さないメンバーもいるね。

森:ひとつのヒントとして、最近は医療施設も手術のときに音楽をかけることがあるそうです。ただし、患者さんが希望する場合に、ご本人が望むものをかけるそう。音があるからいい、ないからいい、というのはなくて、それが当事者にとっていいかどうか、ということなんでしょう。

※後半に続く

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