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tide対談企画「潮流のつくり方」第2回(後編) / ゲスト:中村貞裕さん(トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長)

2016.08.31
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WEB・雑誌の編集者、TV・ラジオのプロデューサー・ディレクター等のメディア・キーパーソンと連携し、ニュース性の高いコンテンツを開発するプロジェクトチーム「tide(タイド)」。tideチームリーダーの川下和彦が、時のメディア・キーパーソンの方々と「潮流のつくり方」を語るシリーズです。

前編に続き、“世界一の朝食”で一躍有名となったbillsや行列のできるかき氷店ICE MONSTERなど、飲食店を中心にヒットコンテンツを次々と世に送り出しているトランジットジェネラルオフィスの中村貞裕さんに、トレンドを生み出すコツや、仕事におけるこだわりなどについて伺いました。

ブームという小波からトレンドという大波に

中村:一度つくったブームをすたらせない秘訣として、もう一つ「大波にしていく」ということがあります。よく例として挙げるのは、ファストファッション産業です。最初にGAPやZARAができたときは、それぞれのお店がそれぞれのPRをしていた。そこにH&M、FOREVER21、TOPSHOPと立て続けに上陸したことで、ファストファッションという大波ができ、ユニクロなんかの国内ブランドも飲み込んでいき、日本人のライフスタイルに影響を与えるような大きなトレンドの波になっていった。僕らもつねに、ブームという小波から、トレンドという大波にすることを考えているんです。

たとえばシェアオフィスなら、ほかの複数のコンペティターさんと一緒に盛り上げる努力をする。雑誌で掲載される場合も、ほかにも特徴的なお店を紹介して特集にしちゃえばいいんじゃないですか、と提案する。小さいものをくっつけていって、大きな波にしていくという発想です。

川下:一旦中村さんの中で編集したものをメディア側にわたしていく、というくらいの感覚ですね。

中村:それがうちのPRの仕方です。だからつねに、どういうグループ分けができるかを考える癖がついているんですよね。東京オリンピックを控えて、いまインターナショナルフードに興味があるんですが、ギリシャとかベトナムとかいろいろあるなかでも特にメキシカンに注目していて。すでにうちでもGuzman y Gomez(グズマン イー ゴメス)というメキシカンを手掛けています。ただ、別で運営しているカジュアルなTacoBellに比べるとプレミアムファーストフードというくくりも出来るんです。どんなグループに入れられるかをいろいろと練っていって、それが大きくなれば特集にできるわけです。こういうPRの考え方は確かに編集そのものなのかもしれないですね。

自分の能力の限界を仕事の限界と考えない

川下:雑誌やネットからインプットを行うということでしたが、例えば海外で何が流行っているかを知るときに、特に重視するソースはありますか。

中村:うちのスタッフはみんな詳しいので、彼らにヒアリングすることも多いですが、海外にいる「カルチュラルエンジニア」たちに教えてもらうことも多いです。僕も最近知ったのですが、カルチュラルエンジニアというのはまさに僕みたいに、お店の運営やオペレーションをやって、何かをつくることで街を変えたりトレンドをつくる人のことなんだそうです。実際にニューヨークにもシドニーにもシンガポールにも香港にもそういう人たちがいて、さまざまな店舗やホテルなんかを手掛けている。海外を訪問するなかで彼らとも仲良くなり、ネットワークができていったので、どんな海外のネットや雑誌の情報よりも早く、現地の情報を教えてもらえるんです。でも一方で、「ニューヨーク 行列 スイーツ」とかで検索して出てくるものが意外とよかったりもするんですよ(笑)。

川下:海外の方とのネットワークづくりもそうですが、社員の方含め、中村さんの周囲には個性的で魅力的な方が集まっている気がします。キャスティングというか、人の編集力というのも重要だと思っているのですが、そうした出会いはどうやってつくっていかれるのでしょうか。

中村:世の中、キャラ立ちした、変わった人を敬遠する傾向がありますよね。でも僕はそういう人たちが大好きで(笑)。ものすごくお金持ちだったりものすごくわがままだったり、どこか極端な人というか。でもそういう人たちに入っていくと何となく面白い感じがするんです。

川下:なんとなくわかります(笑)。

中村:そういえばものすごくカラオケ上手な社員が5人くらいいて、ゲストが来た時に彼らも交えてカラオケに行くんですがすごく評判がいい。僕はカラオケが苦手なので曲を入力するだけで何も歌わないんですが、彼らのおかげで「中村君とカラオケに行くと楽しい」というイメージを持ってもらえてるんです(笑)。僕は今更カラオケの猛練習をするわけにはいかないので、適材適所で、得意な人に得意なことをやってもらえればそれでいいと思っています。

川下:僕も自分がやれないことは、やれる人を見つけてやってもらえばいいと思っています。1人でやろうとしないことも大事かもしれませんね。

中村:そうですね。僕は英語が全くしゃべれませんが、海外では英語が堪能なスタッフが通訳としてつねに一緒にいるので問題ありません。僕が通訳とチームになることで、相手と英語でコミュニケーションできるようになればそれでいいわけです。自分の能力の限界イコール仕事の限界とは考えていないんですね。そういう意味で、自分の能力とか才能、性格によって、仲間のネットワークを決めないようにもしています。そして仕事も断らずにやっていけば、いろんな輪も広がるしビジネスチャンスも増えていく。インプットとアウトプットの繰り返しで目利き力を高めていけば、質のいいコンテンツもつくれるようになる。そういう風にやってきました。

川下:いまの中村さんを形づくっているのは、やはり伊勢丹時代の経験が大きいんでしょうか。

中村:僕が影響を受けたのは、伊勢丹が2割、伊勢丹で僕の上司だった藤巻幸夫さんが7割、親が1割くらいでしょうか。伊勢丹は業界のトップのグループにある会社ですから、「勝ち方」を身につけることができましたね。ファッションショーでも、伊勢丹の名刺を見せればたとえ新人でも最前列に座らせてもらえるんです。そういった経験を通して勝ち癖がついたように思う。トップの看板を最大限に利用して勝つというやりかたを身につけることができました。藤巻さんには、人との付き合い方、モチベーションの上げ方、話し方、仕事の断らなさなど、反面教師の部分も含めて(笑)とにかくありとあらゆる影響を受けました。「俺の名前は自由に使え」と言ってくれていたので、僕は会社を興して最初の3年は、その藤巻さんにかわいがられているという事実と伊勢丹の名前を最大限利用させてもらいました。親はとにかく僕の100倍はミーハーなんです。商売をやっていた親に、小さいころからしょっちゅう「今何が流行ってるか?」ということを聞かれ続けていたので、そういう兆しをキャッチする習性がついたのかもしれません。

川下:ミーハー力と編集力って、すごく相性がいいのかもしれませんね。

中村:基本的にミーハーじゃないとだめでしょうね。インプットもアウトプットも両方できるのがミーハーだと思います。アウトプットをしなければ単なるオタク的な人ですから。その両者の線引きはとても微妙なんですけど、ミーハーでアウトプット力が高ければ、目利きになっていけるんです。あ、これについては本をもう一冊書けるかもしれない(笑)。

川下:目から鱗のすごく刺激的なお話でした。うちの会社で講演していただきたいくらいです(笑)。長時間ありがとうございました!

<終>

中村貞裕 トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長

1971 年生まれ。慶應義塾大学卒業後、伊勢丹を経て2001年、30歳の時にトランジットジェネラルオフィスを設立。カフェブームの仕掛け人として「sign」 などの人気カフェを手がけるほか、台湾発のかき氷店「ICE MONSTER」、チョコレートショップ「MAX BRENNER」、モダンギリシャ料理「THE APOLLO」など手がける店が次々と話題を呼ぶ。ホテル、鉄道、新幹線、商業施設などをプロデュース。活躍は多岐にわたる。

川下和彦 博報堂 tideチームリーダー

2000 年博報堂に入社。マーケティング部門を経て、PR部門にてジャンルを超えた企画と実施を担当。自動車、食品・飲料、IT、トイレタリーなど、幅広い領域で 大手クライアント業務を手掛ける。「tide(タイド)」を発足後、積極的に社外のコンテンツホルダーと連携し、幅広いネットワークを持つ。著書に『勤トレ 勤力を鍛えるトレーニング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)等がある。

※ご参考

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