2016年7月27日

デスティネーション(Destination)
旅先・旅行の目的地のこと。「国内旅行の旅先」「日本人の海外旅行の旅先」に続いて、近年のインバウンドブームの中で「訪日外国人にとっての旅先(特に地方のインバウンド)」という意味でも注目されている。

 デスティネーションというと、JRグループと地方自治体などが共同実施する「デスティネーション・キャンペーン(DC)」が想起される。1978年に当時の国鉄のキャンペーンから始まったもので、日本人にとっての「国内の旅先」という意味で使われている。

 また旅行業界では、フランスやハワイなど人気旅行先を「主要デスティネーション」という言葉で呼んでおり、こちらは「日本人の海外旅行の旅先」という意味で使われている。

 そして近年の訪日外国人の急増によって、デスティネーションという言葉は「訪日外国人にとっての旅先」という意味で使われはじめている。博報堂DYホールディングスは、2016年7月に「デスティネーション・プロデュース」を標榜する株式会社wondertrunk & co.(ワンダートランク アンド カンパニー)を設立したが、ここでいうデスティネーションとはまさにこの第3の意味である。

 デスティネーションという言葉が注目される背景には、これまで外国人が訪れることが少なかった「地方の新しい旅先」をいかに作るかという日本の旅行・インバウンド業界の問題意識がある。

  2015年の訪日外国人旅行者数は1973万人、消費額も3.4兆円でいずれも過去最高を記録したが、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、東京都と大阪府だけで全体の40%、神奈川県・千葉県・大阪府・京都府・愛知県を足すと全体の60%を占めており、都市部に集中している。

  政府が2016年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン」で提示した訪日者数「2020年:4,000万人、2030年:6,000万人」、消費額「2020年:8兆円、2030年:15兆円」という目標を実現するためには、地方に「魅力ある新しい旅先」を作ることが不可欠な状況なのである。

 では、誰が新しいデスティネーションを作っていくのか?そのために期待されているのが、「DMO」である。DMOは欧米で始まった概念で、地域をまたいだ観光ルートの形成、民間企業と連携したマーケティング、高品質なデスティネーションとしての受入整備やブランド戦略などを担う「観光地域づくりを行う舵取り役」である。

  観光庁は「日本版DMO」の概念を打ち出し、観光以外の関係者も幅広く巻き込み、データ・マーケティングやブランディングなどのアプローチを取り込んだ新しい地域のプレーヤーを育成している。実際に2016年3 月に、瀬戸内の7県と地銀7 行と日本政策投資銀行が中心となって設立された「せとうち観光推進機構」など、取組例も増えてきており、今後、急速にDMOの役割が重要になっていくであろう。

 これまでのインバウンドでは、訪日客の数字をどう伸ばすか、“爆買”にどう対応して売上を伸ばすか、といった点に注目が集まっていた。しかし、「世界が訪れたくなる日本」を作っていくには、中長期な「地域社会と外国人旅行者の好循環」を作ることが大切であり、その結果としての地域の経済効果が生まれてくると考える。その意味で、デスティネーションとは、「地方創生×インバウンド」という新しいチャレンジともいえる。

岡本 岳大(おかもと・たけひろ) 
博報堂 アクティベーション企画局 統合コミュニケーションディレクター 兼
株式会社
wondertrunkco. 代表取締役共同CEO

2005年博報堂入社。統合キャンペーンの企画・制作に従事。世界17カ国の市場で、観光庁・日本政府観光局(JNTO)のビジットジャパンキャンペーンを担当。沖縄観光映像「一人行」でTudou Film Festivalグランプリ受賞、ビジットジャパンキャンペーン韓国で大韓民国広告大賞受賞など。国際観光学会会員。2016年7月、博報堂DYホールディングス内に株式会社wondertrunk&co.を設立。

「ウェブ広告朝日」より転載
A15-1396/朝日新聞社に無断で転載することを禁じます)