6月19日、選挙年齢を18歳に引き下げる改正公職選挙法が施行されました。先日、著書「18歳選挙世代は日本を変えるか?」(ポプラ社)を発表した博報堂ブランドデザイン・若者研究所リーダー原田曜平が、本作に込めた思いや執筆中のエピソード等を語りました。

SNS全盛期の若者に、政治ニュースは入ってこない?

-長年若者を研究してこられた原田さんですが、今回「18歳選挙権」をテーマに本を書かれた背景を教えてください。

選挙年齢を18歳に引き下げる改正公職選挙法が可決されてから、多数のメディアより取材を受ける機会がありました。その中で、自分としても関心を持っていったというのがリアルな話です。

あとは、やはり年々若い人の政治離れが進んでいる実感はありました。デモ運動をしろとまでは言わないけれど、総選挙があったらそのときはテレビの特集を見るとか、あってもいいのになと。

ちょうど2009年、総選挙の翌日に若者研究所の会合があったのですが、学生の参加者に「え、選挙って何ですか」って言われたことがあって。「え、選挙だよ。昨日あったよ」、「あ、アイドルの総選挙ですか」みたいに言われて(笑)。すべてのメディアで報じていても、もう選挙が伝わらなくなっているんだとものすごく衝撃を受けました。だから、「18歳選挙権」というよりは、若い人の政治への関心がもう少し高まってくれたらいいなという思いで書いたというのがきっかけです。

やはりSNS全盛期で、この数年、政治ニュースとか世の中のニュースが全然入って来なくなってしまっているんですね。友達がどこかのカフェへ行ったという情報は、例えば長い間会っていない中学時代の友達のものも入って来るのに、選挙があったことは入って来ない。これはすごい時代になったと思いました。

世界の若者≒日本の若者

-各国での若者調査の結果なども本には記載されていますが、執筆中の裏話やエピソードがあれば教えてください。

2005年ごろから中国の若者をウォッチしていて、その後東南アジア等に広げてきましたが、世界中の若者が、すごく似てきていると感じました。おしゃれカフェへ行って、iPhoneをいじって、SNSを見るという。

最近は欧米も見るようにしていますが、実は欧米も想像とは全然違い日本に似ているんです。例えば、本にも書きましたが、アメリカって、若者はみんなセレブに憧れて一攫千金をねらっていると勝手に思い込んでいると思うんです。でも実際は、当の昔に、少なくともリーマンショックでそれは崩れ去っていて。今は日本の若者みたいにまったりしていて、別に車も要らないし、お酒もそんなに飲み過ぎないし、徒歩圏内にある隠れ家レストランを探すのが喜びみたいな状況になっていました。It’s a Small Worldじゃないですけれど、世界中の若者が近い状況になってきていて、今後はグローバルで若者をより見る必要があると感じました。

また、若者とつき合うというのは日本国内だけでもすごく労力が要ることだったりします。ふだんから、バーベキューしたり、LINEで悩み相談に乗ったり。今回も、台湾で家庭訪問調査をしていたら、「僕はひょっとしたら男性が好きかもしれない」という男の子の相談を受けたりしました。ただの調査対象者とインタビュアーじゃなく、年齢が離れている分相談しやすいだろうし、他の大人よりは若い人の事情を理解してくれるという感覚もあるのだと思います。だから、調査する側としては、定点調査を長期的にできるというメリットもある一方で、いろんな人の人生をものすごく背負っている感覚がありますね(笑)。

-今回、若者にトータル何名ぐらい会われたのですか。

多分、8地域各15人くらいじゃないですかね。

-各地域15人・・・かなりの数ですね。

そうですね。家庭訪問なのでそれなりだと思いますよ。通常はそんな量を実施できないものなので。

18歳選挙世代に感じる、“良い有権者”になるポテンシャル

-どういう人たちに読んでほしいですか。

本当は、18歳、19歳の人に読んでもらえたらいいなと思うのですが、若い子はほとんど本を読まないというのが実感としてわかっているので・・・。できればメディアあるいは政治家、政党の方に届いて、それが若い子たちに還元されて、テレビで報じられたりして、若い子たちが何となく投票へ行ってみようかなとか、何となく政治は興味ないけどこの政治家だけは興味あるかなとか、何か一つのきっかけになってくれたらいいなとは思っているんです。

あと、世界中の若者が似てきた点のもう1つは、すごく不利益を被るジェネレーションになってきているということです。将来もらう年金にしても、今の日本の18歳、19歳で言えば、払った分は戻ってこないというのは100%確定しちゃっているわけで、これはすごくかわいそうな損失だと思うのですね。どの国でも上の世代よりは自分たちは恵まれない世代だと答える人が多くなっていて、別に上の世代がずるいわけでもなくて、そういうものなのですけれども。

ただ、もう少し政治に関心を持って、「それは不平等だ」「俺たちの意見も聴け」と主張したほうが、誰にとっても幸せな社会につながると思うんです。

日本の若者の場合、聞き分けがすごくいいので、外国の若者みたいにデモを起こしたりとか、過激なことをしたりはしないんです。それこそ「さとり世代」じゃないですけど、のんびりしていればいいやってね。もともとすごく温和な民族というか国民性というのも大きいとは思います。

でも、彼らは、実はいい社会を、いい政治を行う上ですごく良い有権者になる可能性があると思っています。私利私欲がないからこそ、社会のことを考えられる土壌があるわけです。自分たちもだんだん経済的に厳しくなっているから人の気持ちがわかるというのもあるだろうし、SNSでいろいろな情報が入ってくるからという2つの理由が大きいと思うのですけれど。この点は期待したいところです。

-発売されてまだ間がないですが、反響はいかがですか。

まだまだこれからだとは思うのですが、メディアの方からは、若者の政治離れを防ぐためのアイデアに「目ウロコでした」と言われたりしましたね。親と一緒に選挙に行こう、なんていうのは、少し前には考えられない発想だったと思います。

-今後テーマにしたいもの等はありますか。

今回調べてみて改めてわかったのが、今の18歳って「脱ゆとり第1世代」なんですよ。今までの僕がやってきた若者論だと、わりとまったりした若者たちだったのが、実は、新有権者って、「ゆとりがまずい」と、かなり戻した教育を受けてきた人たちなので、実際には接していてもちょっと違う印象があります。もうちょっと自分の利益にイエスノ―のはっきりしている人たちというか。なので、これらの世代を本格的に調べようかなと今思っています。

あとは、先ほど言ったとおり、世界中の若者たちがかなり似てきているので、海外の若者たちについては引き続き調べたいですね。先進国はある程度見たのですけれども、あと、ドイツとかイタリアとか、その次は中東とかもうちょっと違うエリアにも広げたいなと思っています。

<終>

【プロフィール】

博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー
原田 曜平(はらだ・ようへい)

博報堂入社後、ストラテジックプラニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務める。大学生や20代の社会人と共に、若者の消費行動について調査・分析し、次世代に流行るものをいち早く紹介するほか、マーケッターの立ち場から現代社会を読み解く。著書に「近頃の若者はなぜダメなのか」(光文社新書)、「さとり世代」(角川oneテーマ21)、「ヤンキー経済」(幻冬舎新書)、「パリピ経済」(新潮新書)、「ママっ子男子とバブルママ」(PHP新書)などがある。TV出演も多数。