博報堂が2016年4月発表した、生活者の買物行動活性化につなげる独自のプラニング手法「ショッパーズ・カスケ―ド™モデル」。前編に続き、本取り組みの開発から運用に携わる4人の社員が語ります。

★前編はこちら


(左から)青木雅人、岸村俊哉、長谷川恭平、佐藤智施

店頭で起きている“兆し”を、マスで伝える。 「ショッパーズ・カスケード™モデル」でコミュニケーションが変わる!

すでに始まっている本取り組みですが、得意先の反応等はいかがでしょうか。

青木:まだスタートしたばかりですけれど、こういう流通小売業とメーカーの双方にメリットがある仕組みについて、いいね、という声をいただきます。また、幅広いカテゴリーで対応できるのも、喜ばれる点ですね。飲料やシャンプーとか、オーラルケアから介護カテゴリーなどまで、様々対応できるので。

岸村:そうですね。あと、最も知りたかった店内行動を知るということは、生活者の行動の中で最も知りたかった部分を知ることができるということ。そうすると、店内でのマーケティング施策に閉じることなく、店外しかり、オンラインしかり、生活者の生活行動全体の中でのマーケティングコミュニケーション活動をどのように設計していくのかということにつながっていくので、得意先に対する提案内容をより高度化していくことができると思っています。

青木:あと、得意先に喜ばれるのは、サンプル数としてはけっして多くはないけれど、店頭で起きている賢い商品の選び方をしている人を発見できること。ブームの兆しの発見です。これを見つけることができれば、実はその発見をマスマーケティングで展開していけば、新しい市場がつくれる可能性がある。店内でのリサーチは店頭のコミュニケーション活動にしか活かせないと思われがちですが、必ずしもそうじゃない。今店内で起きている新しい買物行動は、まさに潜在需要だと思うんです。それをマスコミュニケーション化していくことで、新しいマスコミュニケーション手法も開発できる。通常は商品の特徴やUSPから考察して、どう生活者に伝えていくかを考える。そのような商品起点ではなく、すでに売場で起きている買物の仕方から見つけるということ。

佐藤:それを僕らは「スマートショッパーを可視化する」と呼んでいます(笑)。

買物行動デザインのプロと、データマーケティングのプロがタッグを組んで提案

今回の取り組みは、SRM局とデータドリブンマーケティング局(以下DDM局)との連携で進めるということですが、実際、どう連携していくのでしょうか?

佐藤:基本的にSRM局中心に、リサーチサービスを中心に、得意先に対してサービスを展開していきます。その中で無意識調査なのか、アクチュアルデータなのか、いろいろデータがたまってくると思うんですけれど、そのデータを活用してDDM局とSRM局が共同して得意先に対してマーケティングの課題を解決したり、次のマーケティングのプランニングをしていく。

岸村:それらのデータから読み取れる結果も踏まえ、得意先の「プライベートDMP」の構築にどのように生かしていくのかを考えていくのもDDM局の役割です。

「ショッパーズ・カスケード™モデル」で、スマートで楽しい買物行動をつくり出す

今後、「ショッパーズ・カスケード™モデル」を拡充していくことで、実現したいことを教えてください。

青木:一つは、店内でのコミュニケーション活動を変えることですね。店内ってPOPをはじめとした限られた情報しかない。実はテクノロジーが進化していくと、様々な情報をショッパーへ届けることができる。例えばクッキーの商品を手に取るとサイネージに紅茶の情報が出される。我々は当然リサーチサービスもやっていきますが、マーケティングコミュニケーションのプロとして、理想の店内を作れるといいですね。様々な情報やデータが連携して、手に取って興味あったけれど棚に戻した商品が、家に帰るとスマホに商品情報として出てくるような仕掛けとか。でも、それは決して不快なやり方じゃなくて、あ、そうそう、これ買おうと思っていたんだけど、忘れていたなというものが後からスマホに飛び込んできて、そうそう、これ知りたかったんだよねとそこをクリックして、何か詳しい情報を取りに行くとか。

 これは買物研究所で出していますけれども、欲求が次々に流去して、実は今買物にストレスを感じている人がすごく増えていて、そこを変えていかないといけないかなと思っていて(※買物研究所レポートはこちら)。究極にやりたいことは、スマートで楽しい買物行動をもう一回店内でつくること。
そういう意味ではまだスタートラインで、まだまだモデルとしても発展させていかないとなとは思います。

佐藤:「ショッパーズ・カスケードモデル」の産みの親の一人としては、本モデルがより多く広まるといいなと思っています。繰り返しになりますが、流通小売業とメーカーが、もちろん広告会社も含めてですけれど、共通指標でマーケティング活動を評価できるものってなかなか少ないと思うんですよね。そういう意味でこの「ショッパーズ・カスケードモデル」が1社でも多く導入されていくのが、僕にとっても一番うれしいことだし、広告会社として役立つことなのかなとも思います。

長谷川:私は青木さんと少し重複するところもあるのですけれども、生活者にとって楽しい、ワクワクする買物体験をつくるというところが非常に重要なポイントだなと思っていて。例えば店内でのコミュニケーション活動で、自分と関係がない広告がバーッと流れてきたとして、それって僕は全然うれしくなくて。このカスケードモデルを使って、真に楽しい買物のつくり方を考えていくというのは、自分にとって次の課題だなというふうに思っています。

岸村:「ショッパーズ・カスケードモデル」を通じて、インターネット上のデジタル広告の世界を屋外の世界に上手く移植することができたらなと思っています。インターネット上のデジタル広告の世界では、いわゆる一般的な共通指標ができ上がっていて、それをもとに高度化してきたという歴史がある。このショッパーズ・カスケードモデルを指標に、アクチュアルでリアルタイムなデータを活用していければ、屋外の世界においても新しいテクノロジーを活用したコミュニケーションサービスを生み出すことができると思っています。

青木:“リアル”がどんどんデジタル化されていったときに、インターネット上のデジタルの中で起きているマーケティング活動が、屋外や店内等の“リアル”にどんどん広がっていくんだろうね。まず、そこの実験を我々はこの買物というテーマでやってみたいね。

ー終ー

<プロフィール>

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター室長
兼)博報堂 研究開発局長 兼)ショッパー・リテールマーケティング局
青木 雅人(あおき・まさと)

1989年 株式会社博報堂入社。生活者データベースの構築、社会テーマ・メディアに関する研究、マーケティング・テクノロジー開発を担当。

データドリブンマーケティング局ビジネスディベロップメントディレクター
佐藤 智施(さとう・さとし)

IT ベンチャー、外資系マーケティングサービス、M&Aコンサルティング企業において、一貫してサービスや事業開発を担当。2013 年、株式会社博報堂入社。現在は、データの利活用を推進するサービス開発やパートナー提携などのビジネス開発を担当。

データドリブンマーケティング局ビジネスディベロップメントスーパーバイザー
岸村 俊哉(きしむら・としや)

2006年博報堂入社。主に通信・ハイテク・ネット企業のマーケティング戦略立案、およびデジタル領域での事業企画やサービス開発に従事。共著に「マーケティング立国ニッポンへ~デジタル時代、再生のカギはCMO機能~」(日経BP)。

ショッパー・リテールマーケティング局ストラテジックプラナー
長谷川 恭平(はせがわ・きょうへい)

2012年博報堂入社。同年からTBWA\HAKUHODOで、ブランド・コミュニケーションの戦略立案を担当。2015年よりSRM局にて、生活者の購買行動起点のマーケティングを推進するソリューションやサービスの開発、及びその活用を通じたプラニングに従事。