博報堂人が、社会テーマや旬のトピックスを題材に、生活者の暮らしの変化を語る対談企画「キザシ」。
第四回目は、ディグラム・ラボの木原誠太郎(きはら・せいたろう)氏をゲストに、博報堂統合プラニング局・木原龍太郎(きはら・りゅうたろう)が、広告業界でも旬のトピックス、「データとクリエイティブ」について語ります。なお、本企画初の“実の兄弟”対談です!

データとクリエイティブは、兄弟でも水と油か?

木原龍太郎(以下、龍太郎):いま、データ×クリエイティブというものが、ものすごく世の中で語られているというときに、言ってみれば血を分けた兄弟ですよ、僕たちは。

木原誠太郎(以下、誠太郎):そうね。

龍太郎:で、いろいろ寄り道をしてきたわけですよ、僕らは。僕はPRからクリエイティブの世界に入って、誠太郎は、統計学と心理学を掛け合わせてやっていると。ま、二人ともちょっと外様っていうか、本家クリエイティブ、本家データじゃないところでやっていて、僕らのような亜流のやつらが掛け合わさったときに、化学反応っていうか、ほんとのことが見えるっていうこともあるじゃないですか。

誠太郎:はいはい。

龍太郎:しかも兄弟って融合しやすいというところで、データとクリエイティブの融合の可能性を探りたいという対談になっているんですよ。まあ、データと言っても色々あるんだけど、弟さん、どういうことをやっているんですか(笑)。意外と知ったかぶっているんだけど、実は知らないっていう。

誠太郎:そうね。もともと僕は、アンケ―ト、マーケティングリサーチを専門にしていて、ブランディングとか商品開発をするときに使うデータを、企業に対してつくっていたっていうのがそもそものキャリア。いまは「ディグラム・ラボ」っていうのをやっていて、人間の性格を20問で27パターンに分けて、行動を性格から可視化するっていう作業をやっています。ディグラム診断サイトっていうのがあって、アンケート調査のデータベースを基に、心理学とマーケティングで性格を分析して、客観的な診断結果をフィードバックするという。

龍太郎:いきなり難しすぎてわからない(笑)。つまりは、色んな性格のパターンがあって、行動も違ってくると。いままではなんとなく、こいつってこういう奴だよねって言っていたのを、ちゃんとデータでヒモづけていこうっていう話?

誠太郎:そうそう。まあ、根拠をつけて人の考え方とか人の行動というものを分析していこうという。パターンって言ったんだけど、実際には僕ら、1万個の性格パターンで見てる。それをもうちょっとわかりやすくするために、27個のパターンをつくって日本人の性格を分類して徹底的に追っているわけ。うちらは2010年からずっと同じデータべースを追って、それをいま現在の最新のデータとして常にアップデートしてる。日本人全体とか、地方とか都市とかの、いま現在の人の気持ちっていうのを可視化するっていうのがディグラムでやりたいこと。

龍太郎:いわゆる感情とか性格のビッグデータっていうのはなかったりするの? そこをやってるっていうこと?

誠太郎:だから、それは点でしかない。例えば、明るい人とか人生幸せな人はこういう行動をとるかもしれないっていうことは、もしかするといま現在のビッグデータでやってるかもしれないんだけど、うちらはもっと連続して見ている。感情の移ろいといったもので人の性格は変わるから。ストレスめちゃくちゃたまっていれば変わるし、仕事でいいことがあれば変わる。だから常にデータを追っていかないとわからないっていう状態なの。で、うちらディグラムは、それをわかりやすく伝える。データってものすごく難しいように思うでしょ? だってもう嫌な顔してるじゃない(笑)。

龍太郎:だんだん嫌気がさしてきた(笑)。でも、融合しなきゃいけない。

クリエイティブの散弾銃と、絞り込まないデータ分析

龍太郎:俺はPRから始まって、いまCMだとかグラフィックだとかWEBだとか、いろんな方法で統合的にクリエイティブをやってるんだけれども、広告っていうのは、いままで「言い当てる文化」だったんだよね。

誠太郎:うんうん。

龍太郎:なんか、ひとつパシッと言い当てるっていう文化だったけど、俺がやろうとしているPRのクリエイティブは「問いかける」っていう文脈なのかなと。「この商品はこうです」っていうことだと共感したかしないかだけなんだけれども、問いかけて色んな視点をつくっていくっていうクリエイティブに挑戦していくっていうこと。クリエイティブの機能って、感情を誤作動させていくっていうことなんじゃないかと考えてる。今度、データで証明して欲しいんだけど、東名高速の厚木インターってすごい渋滞するじゃん? あそこに「いまなら引き返せる!」っていう広告出して欲しいのよね。

誠太郎:俺が(笑)?

龍太郎:厚木のポイントって、このまま行くか帰るかって心が揺れるのよ。このまま混んでるところを行っても疲れるだけじゃないか、とか。

誠太郎:わかるわかる。

龍太郎:だけど、俺の性格からいうと、「引き返しちゃえば? ○○株式会社」って広告があったとするじゃん? それ見たら、俺は行く。行きたくなる。うちらの親父、宿題をやらなきゃいけないとき、「やめてこっちでテレビ見ようよ」って言うじゃん。それは俺らが反対のことを言われるとムカついてやるっていうのがわかってるから、「やめちゃえやめちゃえ、こっちでテレビ見て、ゆっくりお茶でも飲もうよ」とか言って。

誠太郎:邪魔してくるんだよな。あれ、なんだったんだろうな。

龍太郎:だからディグラムだよ、あれは。こいつはこういう性格だから、こういう行動をさせるためには逆張りだと。どちらかというと、俺らはやれって言われるとやらない。

誠太郎:あまのじゃくだからな。

龍太郎:あれが人を行動させる。

誠太郎:でも、実際それはあるな。

龍太郎:感情スイッチとも言うけど、「感情トリガー」のほうがかっこいいから、俺はそう言ってるんだけど。インサイトっていうとなんか大きな一括りなんだけど、感情トリガーはいろんなとこにあると思うんだよね。そこを引いたら、こいつはめちゃくちゃ笑っちゃうかもとか、そこのポイントをどんどん探していく。

誠太郎:僕らデータマンって絞っていく人達が多いんだよ。でも、こういう話って実は広げていくことなんだよね。もちろん、「あなたはこれ好きでしょ?」って絞って決め打ちするっていう意味でのデータも進化しているんだけど、それがいいか悪いかはちょっと置いといて。そうじゃないのもいいんじゃないかなと。僕らは広げていきたいと思ってる。クリエイティブも生き物だけど、データも生き物で生ものなんだよね。

アンチアルゴリズムで、タライを落として引っ掛ける

龍太郎:ちょっと、的外れなことを言うかもしれないんだけど、俺はハリウッド映画を安心して見られるわけだよ。絶対に勝つだろうっていう。だから、色々ハラハラするんだけど、最後は安心。だけどヨーロッパの戦争映画は安心できない。「やったー!勝った」と思ったら、最後、後ろから打たれて「あれー?」みたいな(笑)。「なんでこうなるの?」っていうのがあるんだよね。でも、ブランドをつくるとかファンをつくるっていうのは、たぶん飽きさせない物語が必要で、「出ました!」「売れてます!」「絶好調です!」「第二弾です!」みたいな定型だと、何の感情トリガーもない。

誠太郎:もう方程式ができちゃってるんだよね。

龍太郎:だから、そこにまさかの展開が欲しい。ディグラムもアンチアルゴリズムなんでしょ?

誠太郎:アンチアルゴリズムってその通り。それをやってるから、僕らはけっこうウケてるのかもしれない。具体的な話で言うと、A群とB群で分けてて、A群っていうのが予定調和群なんだよ。クライアントさんの仕事で言うと、A群は商品とか業界の認知度を量ったりとか、そういうことへの興味について聞いたりとか、業界のリサーチでやるようなことを聞くのね。B群っていうのは全く関係ないことを聞く。例えばコーヒー業界だったら、コーヒーを週に何回飲みますか?とか聞くのがA群で、B群は全く違うの。旅行どこ行きますか?とか、好きな絵は何ですか?とか、コーヒーに関係なく思いついたもの何でも聞く。それを一緒にくしゃっと分析すると、コーヒーを週に1回飲んでる人は、実はお寿司屋さんで玉子を頼む率が高いですっていうのが出てくる。データ上で全く関係ないことを聞いてくっつけてみると、時々おもしろいものが出てくる。そのおもしろいものを、僕らは求めてふしがあるよね。

龍太郎:でしょ? だからそこを突く。例えば飲料で、ただ「おいしくて売れてます」じゃなくて、「ある人には変な味」とかいうのを敢えて出す。賛否両論。

誠太郎:おもしろいね。

龍太郎:そうすると、シニアに売ろうと思ったのに、その情報によってまさかの若い女性に売れたとか。

誠太郎:だけど、それあるよね。

龍太郎:飽きさせない情報で、まさかまさかがどんどん起こって、それで、まさかの売りをつくる。サッカーでいうサイドチェンジをどんどんして、飽きさせないものをつくっていくっていうのがPR的な発想だと思うんだけど。

誠太郎:本当にそう。逆サイドに振るっていうのをうちらもよくやる。「私の性格何型です。私の性格はちょっと優しいと出ました。でも、いまは優しいかもしれないけど、実は家に帰るとけっこう暗くて厳しいとかいう人もけっこういたりします」とか、そういう姿を否定もせず肯定もせず、常にウォッチしていくっていうのがうちらの最初の仕事。で、こうすれば楽しくなるんじゃないかな、こうすれば悩んでることが治るんじゃないかなっていうのを、常に僕らは実験してる。ラボだから。で、実験してみて、一個一個潰していくっていうのがうちらの作業です。

龍太郎:それ、ちょっといたずらに似てない? こういう数字が出ていて、ちょっといたずらで、ここからタライを落としたら、こいつ怒るかな、とかさ。

誠太郎:絶対怒るでしょ、それは(笑)。でも確かにそういういたずら心とか、まあ、余地だよね。サイトを見てもらうとわかるんだけど、僕らは80%の精度なんですよ、敢えて。広告もそうで、言い当てすぎちゃうと引いちゃう。

龍太郎:そうだね。腹八分目のデータと腹八分のクリエイティブっていうのがいいね。

誠太郎:うちのサイトに来てる人って、ほんとに2回、3回以上やってる人達が半分以上なのよ。再来訪率っていうんだけど、それが50%を超えてるのね。自分で気になって、もう一回来ちゃう。

龍太郎:そうだよね。1回きりの結論じゃなくて、また次には変わっている。「不変と可変の美学」だっけ?

誠太郎:そうそう。だから、変わらないという不変の部分と変わる可変の部分とがだいたい8対2くらい。で、「俺、変わったかな」っていうところと「あれ、俺、変わってないよ」というところ、両方で、突っ込みっていう部分がすごい大事かなと。

龍太郎:そうだね。突っ込みの余白だよね。だから俺、「不変と可変」っていう言い方がすごくいいと思っていて、何かメッセージするときも不変が必要なんだけど、可変の余地を残しといたほうが、物語は絶対におもしろくなるっていうのはあるよね。そもそも昔、もっとコミュニケーションが自由な時代は、企画とかで仕掛けるとかいう感覚だったと思うんだよ。世の中を揺さぶりたいっていう、みんなやんちゃないたずらっ子だったわけ。でも、データが出てきて、それが不足しちゃってる感じがしてる。積み上げて精緻化していくとか。だけど逆で、ここで意外な反応値あるんだからドッキリ仕掛けられるじゃんっていうふうに広がったほうがおもしろくできるはずだし、もう一回やんちゃな時代に戻れる。本当の融合ってそういうことだよね。

クリエイティブとデータの二人三脚がつくる、 コミュニケーションの変化球が世の中をおもしろくする

誠太郎:くだらないデータばっかりだからね。僕らの持ってるデータって。

龍太郎:ちゃんとしたデータとくだらないデータを掛け合わせるっていうこと?

誠太郎:そうそう。みんなまじめになり過ぎているかもしれない、クライアントさんと向き合っているときに。お金っていうテーマで調査をしたことがあるのね。30代で1,000万円貯蓄してる人を貯蓄賢者として、その人達の行動ってどういうものかっていうとき、そのクライアントさんは「やっぱり株の投資をしている人ですね」とか、そういう真っ当な結果しか持っていないわけ。で、「ディグラムでやったらどうなるんですか?」って言われて色々調べた結果、朝起きたときに、まず水一杯飲んでいる人が貯蓄賢者になりやすいっていう。

龍太郎:出た!貯蓄賢者ポテンシャル(笑)。

誠太郎:お茶じゃなくて水を飲んでいる人が、なぜか異常に貯蓄率がいいっていうことがわかった、特に女性ね。

龍太郎:それを信じるならば、金融会社が水を配ればいいと。

誠太郎:そうそう、そういうことができる。これ、講演とかでしゃべるとウケがすごぶるいいのよ。

龍太郎:それは統計上で出てるってことでしょ?

誠太郎:そう。A群とB群の変調の部分。変化球の部分が、ものすごく変化球なんですよ。そこがたぶん、龍太郎が言っているクリエイティブと匂いが似てるなっていう。

龍太郎:一緒に考えればいいんだよね、変化球の部分を。だってその質問自体の発想がクリエイティブじゃないとね。

誠太郎:そう。B群を考えるのはアホなやつらじゃないとダメなんだよ。

龍太郎:アホか、俺は(笑)。

誠太郎:いや、柔軟な発想ね(笑)。広告会社さんとかと組むとおもしろい人達がいるから、うちらはB群のおもしろいのがつくれる。そもそもA群は俺らが持ってるし、クライアントが持ってるからね。

龍太郎:その変化球の質問自体がシナリオになってるっていうことだよね。それぞれクリエイティブ、データっていう専門はあるんだけど、この変化球だっていう仮説を一緒に出し合ったらおもしろいよね。感情トリガーとか、いたずら心だとか、企てるとかって俺は言ってるけど、具体的にそれは何かっていうと、やっぱり変化球だよね。データとクリエイティブの融合が楽しいことだって実証できたら、流れはまた変わってくるのかなって思う。

誠太郎:幅が広がるからね。うちらもそういうふうにデータを使おうとしてる。こういうのって、たぶん日本人の感性だと思うんだよね。変化球とか余地とか、ファジーなものなので。だから僕らがやると、日本の企業にもウケはいいんだけど、外国の人達のほうがびっくりする。外資系企業の方々と話すと、「そんな視点は考えていませんでしたよ」「どうやってこんなデータを出したんですか?」って。B群っていう考え方が、まずないからね。「考えられない」と。「感動します」「いいアルゴリズムつくりましたね」って言われたんだよ。

龍太郎:俺は、誠太郎の言ってる、データはやっぱり生もので変わっていくものだ、だから常にウォッチしていくっていうのが、そうだなと思って。俺にもやっぱり表現、コミュニケーションって生ものだっていうのがあって。日本人は寿司じゃないけど、いいネタが入ったらどんどん変えていくっていう。

誠太郎:そうそう。

龍太郎:俺、サッカーのサイドチェンジって言ったけど、なぜかっていうと、いままでみたいに駅伝方式で「はい」って言って襷渡して、「データ出ましたー!」「次クリエイティブ走ってー!」みたいな感じだとだめだと思うんだよ。データとクリエイティブが「おいっちに、おいっちに」って感じで、こまめに伴走しなきゃいけないってこと。

誠太郎:ちゃんと引っ掛けるということだね。

龍太郎:もうちょっとアグレッシブに、本当のいたずらっていうか、衝撃波をどうつくるかを一緒に考えていくっていうね。タライが落ちるっていう、超アナログな面白いはずしを。データ分析業界からするとアウトロー的な道筋の、データ×クリエイティブの掛け算であっと驚かすのが超おもしろいよね。それ、やりたいね。

<終>

PROFILE

木原 誠太郎(きはら・せいたろう)
ディグラム・ラボ株式会社 代表取締役

広告代理店やSNS事業会社でマーケティングを担当、様々な企業のマーケティングコンサルティングに携わったのち2013年ディグラム・ラボ株式会社を設立。心理学×統計学で人間の本音を分析、カウンセリングするプログラム「ディグラム」の研究を進めながら、同時に事業展開。TV出演・著書多数。

木原 龍太郎(きはら・りゅうたろう)
株式会社博報堂 統合プラニング局 統合コミュニケーションディレクター

1999年、㈱博報堂入社。マーケティングプラナー、PRディレクターを経て、キャンペーン全体の戦略・企画立案を行う統合コミュニケーションディレクターに。マーケティング戦略、CM企画、販促施策、情報戦略に至る全領域でのクリエイティブディレクションを手掛ける。

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