博報堂 アートディレクター

遠藤 礼奈

「調査と妄想」

調査データってせつない
と思うことがある
知りたい相手(人とは限らない)のことをイマイチ理解出来ず
お金と時間を使って調べる行為の産物にも思えるからだ

何かにたとえると、うーん、
好きな人の事を興信所を使って調べるような…

何にもしなくてもお互い分かり合えるのが理想っちゃ理想
だけどビジネスの世界なんかだと特にそうもいかない
調査データは時としてとてもベンリなツールになる

でも見方にちょっとコツが要る気がする
例えば生活定点をぼーっと見ていると
働きについての項目で

「勤務中にデスクで私用電話をしたことがありますか?」

「ある」

の回答率は減少していて「ここ20年で最低」だ

「勤務中に会社のPCで私用のメールを送受信することをどう思いますか?」

「非常識だと思う」

の回答率は「ここ10年で最高」

勤務中の私用電話は減るし私用メールには厳しくなるし、
一見、「おお、世の中のモラルは向上してる!?」と思うけど
はたしてそうなんだろうか

この質問に対する人々の答えは
そこに起きている背景のことまでは語ってくれないのだ

想像なので、正しいかわからないけれど、
おそらくスマホの利用者が増えて
私用のことはLINEかなんかでやっちゃうから
単にメールの使用頻度が下がっているのだろう
電話なんて周りにばれちゃうからもってのほかだ

以前エスノグラフィ調査で家庭訪問に行ったときのことを思い出した

「節約なんて気にしてないんですよぉ~」と話す主婦
しかし、家じゅうの蛍光灯は全てLEDに交換されていた

調査データの質問はあくまで質問で
答えを鵜呑みには出来ないのだ
イヤよイヤよも好きのうち
みたいなことが起きているのだ

人間て本当にややこしい

さてそんな視点でもういちど
生活定点のオーガニックに関する調査をみてみる

「自然食品(オーガニック、無添加食品など)をよく利用する」

減っている!そんなはずは無い!!!
かつてのオーガニック商品を取り扱うお店は、
なにやら思想めいたものももれなくセットになっていて
身体や環境にいいのはわかっているんだけれど
なんだか近寄り難い雰囲気を醸していた
パッケージデザインもお世辞にも素敵とはいえなかったし
素敵じゃないのが逆にそれっぽくてヨシ!とされているような気さえした

それが近年、オサレな有名人が
オーガニックに関心あるという情報が
テレビやらネットやらで盛んに一般家庭に入って来たからなのか
なんだか「オーガニックはセレブの道楽」といわんばかりの
「贅沢で素敵な行為」なイメージが生まれ
それに憧れる中流の人まで広がって
デパートの地下や道の駅に行かないと手に入らなかった有機野菜だって
その辺のスーパーでも買えるようになったではないか!
ふっつーの女子高生が電車の中で裏っかわの小さい文字の
小難しい成分について語ったりしてるではないか!

「オカルト」が「スピリチュアル」になって心の敷居が下がったように
「自然食」が「オーガニック」と呼ばれるようになり
かつてよりぐぐっとカジュアルになってるはずなのに
これはいったいどういうことを意味するの!?

あまりにも浸透しすぎちゃって、「特別なことはしてませんよ」
という気分になっているの!?

妄想スタート

きっと違和感の向こうには大切なことがある
調査データと向き合うとき、
多分妄想はカレーのルー部分くらい大事だと想う

今日も多くの人たちが
調査データを前に悶々と妄想を繰り広げている
何かにたとえると、年頃のかわいいムスメのプレゼントに悩むお父さんのような
そう思うと、調査データって愛おしい

素敵な発見が誰かをハッピーにできますように

連載【私の生活定点】バックナンバー

『生活定点』調査とは、1992 年から 22 年間にわたって隔年で実施している生活総研のオリジナル定点観測調査です。同じ地域(首都圏・阪神圏)、同じ対象者設定(20~69 歳の男女)に向けて、同じ質問を継続して投げ掛け、その回答の変化を時系列で観測しています。 項目数は約 1,500 項目に及び、衣、食、住、健康、遊び、学び、働き、家族、恋愛・結婚、交際、贈答、消費、情報、メディア接触、社会意識、国際化と日本、地球環境など、生 活者のありとあらゆる領域を網羅しています。2014年、最新調査結果の公開にあたって「生活定点」特設サイトを開設しました。
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